2012年2月11日土曜日

アラジンと魔法のランプ(1)

アラジンと魔法のランプ(1)

中国はアジアの東にある古い国で、その大地は、太平洋沿岸から中東にまでおよぶ広大なものです。アラビア商人たちは、何千年も前から、中国西部の高くそびえる山脈を越え、地中海沿岸のアラビア諸国に、絹やこうしん料や陶器などといった高価で貴重な品を持ち帰ったものでした。そしてかれらは、自分たちが見聞きした話や物語をも、それらの品と一緒に持ち帰ったのです。

 これは、そのようなアラビアの商人たちが伝えた、アラジンという名の少年についての物語です。アラジンのお父さんはムスタファーという名の貧しい仕立て屋でした。かれは中国西部のある町で、子どもたちを育てるために服のつくろいもので生計を立て、一生懸命働いていました。

アラジンは元気に飛び回る活発な少年でしたが、遊びやいたずらばかりにはげんでいました。お父さんはいつでもそんなアラジンに、学校での勉強やお店の手伝いや、裁縫のけいこにはげむよう、言って聞かせているのですが……。
 しかし、やがてそのお父さんは、アラジンのことを心配しながら体を悪くし、妻とアラジンを残して死んでしまいました。それで2人は、大変な暮らしをしなければならなくなったのです。

 それでもアラジンは仕立て屋の仕事には目もくれないので、お母さんはお店を売らなければならなくなり、自分と息子の生活のために、一生懸命に綿つむぎをして働きました。しかしアラジンはといえば、お父さんが生きていた時にあれほど注意してきたというのに、そして、そのお父さんはもういなくなってしまったというのに、ますます言うことを聞かず、物事をよく考えもしないで、一日の大半の時間を、友だちと一緒に町の路地をうろついて過ごしました。

 ある日、アラジンと友人たちが町の路地で遊んでいると、一人の見慣れない男が通りかかり、何事か考えながらかれらを近くでながめていました。やがて男は少年の一人に近づき、お菓子をあたえ、それから細い指でアラジンのほうを指し、その少年にアラジンの名前をたずねました。それで少年は、男にアラジンの名前を教えました。

 しばらくすると、その男はアラジンに近づき、とつぜんこのように言いました。
「わたしはその姿ですぐに君の事がわかったよ、アラジン! 君は仕立て屋ムスタファ―にそっくりじゃあないか……、わたしの兄さんに! わたしは君の叔父さんだよ! さあ、兄さんのところへ、すぐに連れて行っておくれ。」

 そこでアラジンはこう答えました。
「でも、父さんは死んでしまったんです! もう3ヶ月も前に。何も知らなかったのですか?」
 するとそれを聞いた男は悲しみにくれ、激しく泣きました。

「ああ、兄さん、かわいそうに! わたしは自分がようやくここに帰って来れることを喜んでいたのに。しかし、それでもわたしは君たちに対して、血のつながった者としての義務(ぎむ)を果たさねばならない。」

 そう言うと男は、アラジンにいくらか金貨をあたえて、こう言いました。
「これを持って母さんのところへ行くんだ。そして、わたしが今夜君たちを訪ねようと思っていると母さんに伝えてくれないか。」

 そこでアラジンがお母さんのところへ飛んで帰ると、男は家の場所を知ろうとアラジンを目で追いました。心の中でこうつぶやきながら。
「ついに見つけたぞ。かれこそ、あのまほうのふう印を解く少年だ。」

 男は、本当はアラジンの叔父なんかではなく、中国の東部からやって来た悪い魔術師で、自分を世界一の金持ちにしてくれる方法のためなら、何でもするような男だったのです。

 この男は、じゅもんや特別な力によって、中国西部にかくされてふう印されている宝の中にあるまほうのランプの秘密を知ったのでした。そしてそのふう印は、「アラジン」という名の少年の手によってしか解かれないということも。そのために、かれは中国の東部から西部へとはるばるやって来たのです。

 アラジンは金持ちの叔父さんのことを知って喜び、金貨を持ってお母さんのところへ行きました。しかしお母さんは驚いて、こう言いました。
「おまえのお父さんは、自分に弟がいるなんて言わなかったよ。東部にも西部にも。でも、その人はわたしたちに金貨をくれたのだから、夕食を用意しなければいけないね。そしておまえの父さんがこのわたしにまでかくしていた兄弟の秘密を、その人から聞いてみましょう。」
 やがて夜になると、男は仕立て屋ムスタファーの家へやってきました。陰謀が成功する大きな希望を抱(だ)きながら。

 にせの叔父さんは家の近くまで来ると、悲しげな様子をして見せ、家に入ったとたんに泣きくずれて、なげきかなしみました。
「ここが、わたしの愛するムスタファーが住んでいたところなのか! わたしの親愛なる兄さんはここにすわっていたのか!」

 男はなげきながら、自分が40年前に商売のために西部へ旅立ったことについて、話し始めました。自分は家族とはなれた悲しみを抱きながらずっと暮(く)らしてきたのだけれど、ようやく大金を手にすることができたので、故郷へもどろうと思ったのだ……。
 それなのに、つらい長旅の末にようやく故郷にたどり着いてみると、ムスタファー兄さんはもうこの世を去ってしまっていたなんて。

 そして涙をぬぐうと男はアラジンにほほえみかけ、こう言いました。
「でも、兄さんはわたしに男の子を残してくれた。兄さんの昔の姿とそっくりな男の子を。」
 それからアラジンに向かってこう言いました。
「君はどんな仕事の見習いをしているんだい? 父さんみたいに仕立て屋になるのかい?」

 するとアラジンのお母さんが話に割って入り、厳しい口調でこう言いました。
「アラジンは遊び人のなまけ者なんです。友だちと遊ぶことばかりに一生懸命なんですよ。」
 それを聞いてにせの叔父さんはアラジンのお母さんの心をやわらげるように、こう言いました。
「かれのことはわたしに任せなさい。商売の道でかれに将来を用意してあげましょう。」


翌朝、にせの叔父さんはアラジンを連れて市場へ行き、かれに豪華な衣しょうを買いあたえました。アラジンはそれを着て気どって歩きながら帰ってきました。そして男はアラジンのお母さんにかれのその姿を見せ、こう言いました。
「ごらんなさい、いかがです? これでもうかれは立派な商人に見えますよ! 近いうちにわたしはかれのために店を買い、かれに商売を教えこみましょう。」

 そして数日後、男はアラジンと一緒に町を歩き、きれいな店や、大商人の城などをたくさん見て回りました。君も近いうちにこのようなものを持てるようになるのだ、とアラジンに語りかけながら。もちろん、その言葉はアラジンの耳に心地よくひびき、かれもまた、それが実現することを心から夢見るようになったのでした。





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